在来軸組工法と枠組壁工法の見分け方は?構造の特徴と違いをわかりやすく解説
目次
日本の木造住宅は、長らく「在来軸組工法」が主流でしたが、近年では「枠組壁工法(ツーバイフォー工法)」を採用する住宅も増えてきています。どちらの工法も木造住宅であることに変わりはありませんが、構造の成り立ちや耐震性能、間取りの自由度、施工スピードなどに違いがあります。
この記事では、それぞれの工法の特徴と違い、さらには「どうやって見分ければいいのか?」という実践的な視点も交えて解説します。住宅の性能や施工方法に関心のある方、家づくりを考えている方、工務店の関係者にとっても、基礎知識として役立つ内容になっています。
この記事でわかること
- 在来軸組工法と枠組壁工法の構造の違いがわかる
- 住宅外観や内部構造から工法を見分けるポイントを理解できる
- 両工法のメリット・デメリットをふまえた選び方ができる
- 第三の選択肢としてのハイブリッド構法について知る
在来軸組工法と枠組壁工法の見分け方は?構造の成り立ちを理解しよう
在来軸組工法と枠組壁工法は、どちらも木造住宅を支える主要な工法ですが、建物を支える構造の考え方に根本的な違いがあります。
在来工法は、柱・梁・筋交いといった「軸」で構造を成り立たせるのに対し、枠組壁工法は「壁面」で建物を囲いながら構造体を支える考え方です。
そのため、耐力の伝わり方や地震への対応の仕方も異なります。まずは構造の基礎的な違いを理解することが、工法の特徴を正しく見極める第一歩となります。
柱と梁で構成される「在来軸組工法」
在来軸組工法は、日本の伝統的な木造建築に根ざした工法で、「柱」と「梁」を組み合わせた軸組構造が特徴です。構造体がフレーム状になっており、建物全体の荷重を柱と梁で支える仕組みです。柔構造であるため、地震の揺れをしなやかに受け流すという特性があり、木材の粘り強さが活かされています。
間取りの自由度が高く、将来的なリフォームや増改築にも柔軟に対応できるのが利点です。現場での大工技術に左右される場面もありますが、その分、職人の技術が反映されやすいのもこの工法の魅力です。
面で支える「枠組壁工法(ツーバイフォー)」
一方の枠組壁工法は、**パネル状の壁材で建物全体を箱のように支える「面構造」**が特徴です。床・壁・天井が一体化し、地震の力を分散させやすいため、構造的な安定性に優れています。ツーバイフォー材と呼ばれる規格化された木材を使用するため、施工の効率化や品質の均一化が図れます。
設計の自由度にはやや制限があるものの、工場生産を組み合わせた省施工・短工期な建築が可能なため、分譲住宅などで多く採用されています。
施工性・設計自由度・強度——用途によって異なる選択基準
どちらの工法にも一長一短があり、選択の基準は用途や重視するポイントによって変わります。自由な設計や将来的な間取り変更を重視する場合は在来軸組工法が有利です。
職人の手仕事による柔軟な対応ができる反面、施工品質は現場に依存しがちです。一方で、短工期・コスト安定・構造の均一性を求めるなら枠組壁工法が適しています。
設計の自由度は制限されますが、プレカット・パネル化によって高い施工効率と品質の均一化が図れます。何を優先したいかによってベストな工法は変わるのです。
間取りの自由度と設計対応力は在来工法が有利
在来軸組工法は、柱や梁の位置を柔軟に調整できるため、自由な間取り設計が可能です。リビングの吹き抜けや大きな開口部、将来的な間仕切り変更などにも対応でき、ライフスタイルの変化に合わせやすい点は大きなメリットです。特に、個人のこだわりが反映されやすい注文住宅では、在来工法が選ばれることが多くあります。
施工スピードや品質の均一性は枠組壁工法が強み
枠組壁工法では、あらかじめカットされた材料やパネルを組み立てるため、工期の短縮が可能です。また、施工工程が標準化されているため、品質のバラつきが起こりにくいという利点もあります。建売住宅や分譲地など、一定の品質とスピードが求められる現場では、コストパフォーマンスに優れた選択肢となります。
耐震性能は設計・施工次第でどちらも高水準に
耐震性については、どちらの工法も正しく設計・施工されれば十分な耐震性を確保できます。在来工法では耐力壁の配置がポイントとなり、枠組壁工法ではパネルの連続性が重要です。耐震等級や構造計算を行い、適切な施工が行われていれば、どちらの工法でも地震に強い住宅を実現可能です。
見た目や図面から工法を見分けるポイント
実際に建物を見るだけで工法を見分けるのは簡単ではありませんが、いくつかの判断材料があります。例えば、大開口のリビングや複雑な間取りは在来工法に多く見られる傾向があります。
一方、窓が規則正しく配置されていたり、間仕切りが直線的な場合は枠組壁工法の可能性があります。さらに確実に見分けたい場合は、設計図や構造計算書を確認するのが一番です。
構造図に柱・梁の表記が多ければ在来工法、壁面の連続性が強調されていれば枠組壁工法と見分けることが可能です。
構造のヒントは開口部と天井裏にあり
工法の違いは、外観や天井裏などからも判断できます。例えば在来工法では、開口部(窓や出入口)が大きく、間取りも複雑になりがちです。一方、枠組壁工法では、構造上大きな開口部を取りにくいため、均一な配置になっていることが多いです。天井裏に小屋組(梁や母屋)が見える場合は在来工法の可能性が高いでしょう。
図面・構造計算書があれば正確な判断ができる
もっとも確実な見分け方は、建築確認申請時の図面や構造計算書を確認することです。「軸組図」や「構造伏図」などを見れば、柱・梁の有無や壁構造が把握できます。見た目だけでは判別しにくい場合も、図面を確認することで明確に工法を見分けることができます。
リアルウッド建材が提案する“ハイブリッド構法”という新たな選択肢
在来工法と枠組壁工法、それぞれの強みを活かし、課題を解決する手法として、リアルウッド建材では「DUAL-MAXパネル工法」という独自技術を提案しています。
この工法は、在来の軸組構造に高性能な構造用パネルを組み合わせることで、耐震性・断熱性・施工性を一体で向上させた“ハイブリッド構法”です。従来工法の設計自由度はそのままに、プレカットとパネル化によって高品質な施工を安定的に実現。
今後の住宅建築における新たなスタンダードになり得る工法として注目されています。
自由度×強度を両立するDUAL-MAXパネル工法
在来軸組工法の「柔構造」と、構造用パネルによる「面構造」を融合させたのが、リアルウッド建材が提案するDUAL-MAXパネル工法です。この工法では、従来の大工技術に頼らずとも、耐震性・断熱性・施工性のすべてを高水準で実現できるよう設計されています。
次世代の住宅ニーズに応える“第3の選択肢”
少子高齢化による職人不足や、ZEH基準への対応、省施工・高性能住宅のニーズに応えるために、従来の工法にとらわれない発想が求められています。DUAL-MAXパネル工法は、**在来の良さを残しつつ、構造・断熱・施工の課題を解決する“次世代型ハイブリッド構法”**として注目されています。
まとめ
住宅の構造を理解することは、安心で快適な暮らしを実現するうえで欠かせない視点です。
在来軸組工法と枠組壁工法は、見た目は似ていても構造のアプローチがまったく異なります。それぞれにメリット・デメリットがあり、選択のポイントは住まい手のニーズや建築側の体制によって変わります。
この記事のまとめ
- 在来軸組工法は柱・梁の構造で自由な設計が可能な伝統的工法
- 枠組壁工法はパネル構造で施工のスピードと均一性に優れる
- 見分けるには開口部の配置や図面の確認が有効