建築現場の職人不足にどう立ち向かう?今求められる対策と効率化技術
建築業界において、職人不足はもはや一過性の課題ではなく、業界構造全体に関わる深刻な問題となっています。高齢化が進む一方、若手人材の確保は難航。属人的な現場管理や品質のバラつきも深刻化しています。
こうした状況に対応するには、施工体制の見直しや標準化、教育体制の強化、そして現場負荷の軽減が不可欠です。本記事では、建築業界が直面する職人不足の現状を整理し、各段階で実行可能な対策を解説。リアルウッド建材が取り組む支援策にも触れながら、これからの建築のあり方を考察します。
この記事でわかること
- 建築業界における職人不足の構造的要因とリスク
- 設計・施工・マネジメントにおける具体的な対策
- 教育・人材定着に向けた企業の取り組みと課題
- 現場負荷軽減に向けた製品・支援体制の紹介
建築業界における職人不足は深刻な経営課題となっている
現場での作業を支える職人の減少は、住宅供給や品質維持、コスト管理において企業経営に直結する課題となっています。労働力人口の減少は避けられず、抜本的な対策が求められています。特に中小規模の工務店では、一人ひとりの職人が現場の品質・スケジュール・収益に直結する重要な存在となっており、一人でも人材が欠けるだけで大きな損失につながる状況が各地で見られます。
高齢化・若手不足・多能工化の流れ
建築現場では、熟練した高齢の職人に依存する傾向が強く、若年層の新規参入が減少していることが深刻な課題となっています。現場を支える主力層の多くが60代以上となり、近年では引退も相次いでいます。
一方、若手人材は建設業の3Kイメージ(きつい・汚い・危険)により敬遠されがちで、採用・定着の両面で苦戦が続いています。
そのような状況の中、多能工化によって一人で複数の工程をこなせる人材育成が注目されていますが、技能習得には時間と教育体制が不可欠であり、すぐに解決できる問題ではありません。
現場の属人化と施工品質リスク
現場作業が一部のベテラン職人に依存する「属人化」は、急な離職や体調不良などによる業務停滞のリスクを常に抱えています。
さらに、個々の職人によって施工精度や作業の進め方にばらつきが生まれ、同じ図面であっても品質に差が出ることがあります。
こうしたばらつきは、特に構造・断熱など住宅性能に直結する部位で顕在化しやすく、施主クレームや補修対応といったコスト増につながります。属人性を排除し、誰が施工しても一定以上の品質が保てる体制づくりが、これからの建築現場には必要です。
職人不足への対策は、設計・施工・マネジメントの見直しから
設計段階での工法選定、施工プロセスの単純化、管理体制の効率化。この3点の見直しが、職人不足に対する実効性の高い対策となります。対症療法的な人材募集だけでなく、工程全体を俯瞰した構造的改革が求められています。ここでは、施工現場で実際に取り入れられている具体的な手法を紹介します。
プレカット・プレパネルの導入による技能依存の軽減
工場での加工(プレカット)や構造パネルのプレパネル化により、現場での加工工程が削減され、技能依存を最小限に抑えられます。これにより、経験の浅い人材でも一定の品質で作業が可能となり、チーム全体の生産性向上に寄与します。
システム化・マニュアル化による施工標準の共有
業務フローの可視化とマニュアル化は、属人性の排除と新人教育の加速をもたらします。BIMや現場アプリを活用することで、誰が現場に立っても同じ品質を再現できる仕組みづくりが現実のものとなっています。
協力会社との関係性再構築と現場力の底上げ
単なる下請けではなく**“共創パートナー”としての関係性構築**が重要です。施工指導・技術共有・現場サポートなどを通じて、協力会社全体の底上げが図られれば、現場ごとのクオリティ差が軽減され、より安定した施工体制を維持できます。
若手人材の確保と定着には、働き方と教育体制の整備が不可欠
若年層に選ばれる業界・企業となるためには、待遇や職場環境の改善に加え、育成の仕組みを体系化することが求められています。
建設業の“見える化”と業務負荷の最適化
若手人材の定着や業務効率の向上には、現場の情報を“見える化”し、業務の偏りや負荷を可視化する仕組みづくりが効果的です。
進捗・作業時間・担当者・エラー率などの情報を数値化・共有することで、無理のある作業配分や過度な残業を回避できます。さらに、社内SNSやアプリを通じたリアルタイム共有により、施工管理者の負担軽減と若手の主体性向上も期待できます。
「どこに無理があるか」「どこを改善すべきか」が見えることで、属人化や精神的な負担も減少し、より働きやすい環境へと近づきます。
OJT+DX活用による育成スピードの加速
現場OJTに加え、動画マニュアルやVR教育ツールの活用が広がりつつあります。DXを活用した教育環境の整備により、未経験者でも短期間で一定レベルのスキルを習得可能になっています。
魅力ある企業文化とチーム体制の重要性
働く理由は給与だけではありません。企業文化や人間関係、成長実感などが若手の定着に直結します。チーム単位での成功体験や自己成長を実感できる職場づくりが、若手の心を掴みます。
リアルウッド建材が支援する“施工負荷軽減”と“品質安定”の取り組み
建築現場を支えるメーカーとして、リアルウッド建材では、職人不足に対応した製品・支援体制を拡充しています。製品単体の供給にとどまらず、導入から教育、フィードバックまでを一貫して支援することで、工務店や建設会社との信頼関係を築いています。
構造・断熱一体型パネル「DUAL-MAXパネル」による省工程化
「DUAL-MAXパネル」は、構造用合板と断熱材を一体化したプレパネル。これにより、従来の「構造材施工→断熱材充填」という2工程を1ステップに短縮。現場作業の簡略化と人員負荷の軽減を実現します。
標準化データの提供と現場カスタマイズの両立
リアルウッド建材では、設計・構造・断熱における標準化された部材仕様や施工データを提供することで、現場の判断や加工の手間を減らす支援を行っています。
特にDUAL-MAXパネルのような製品は、基本設計に沿って最適な組み合わせが構成されており、導入工務店が迷うことなく現場に適用可能です。
一方で、地域性や顧客ニーズに応じたカスタマイズにも対応できる柔軟性を維持している点も特徴です。標準化とカスタマイズの両立こそが、現場効率と差別化の両立を実現する鍵となっています。
まとめ
建築業界における職人不足は、経営・品質・納期に直結する大きな課題です。対応するには、現場の属人化を脱却し、設計・施工・教育すべてのプロセスを見直すことが不可欠です。
リアルウッド建材では、こうした課題に向き合いながら、製品提供だけでなく技術共有や人材育成支援を通じて、現場の生産性と品質の両立を実現しています。
この記事のまとめ
- 建築現場では高齢化と若手不足により、職人の継続確保が困難になっている
- 設計・施工の見直しやマニュアル整備、協力会社との関係強化が不可欠
- 若手定着には、働き方改革・DX活用・企業文化の整備が重要
- リアルウッド建材の「DUAL-MAXパネル」は、作業工程の簡略化と品質安定に寄与

監修者: 谷口 伸太郎
1964年、滋賀県大津市南志賀に生まれる。近江神宮にほど近い自然豊かな環境で幼少期を過ごし、木と建築への興味を育んできた。建築業界での経験を重ねる中で、現場の属人性や職人不足による施工品質のばらつきという課題に危機感を覚える。高性能で安定した品質の住宅づくりをサポートしたいという想いから、2006年、リアルウッド建材を設立し代表取締役に就任。断熱・耐震・施工性を兼ね備えたDUAL-MAXパネル工法を開発し、高性能住宅をより多くの方に届けるために日々奮闘している。保有資格:二級建築士。