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建築業における働き方改革の今——職人不足・長時間労働をどう変えるか?

「建築業界は人手不足が深刻」

そんな言葉が当たり前のように聞かれるようになった今、働き方改革は単なる人事課題にとどまらず、企業の存続そのものを左右する経営課題となっています。

長時間労働や休暇の取りづらさ、現場の属人化、高齢化にともなう技能継承の問題など、現代の建設業が直面する課題は複合的かつ根深いものです。こうした背景の中、設計・施工プロセスの見直し、マネジメント改革、DX導入など、現場視点に立脚した「本質的な働き方改革」が求められています。

この記事でわかること

  • 建築業界における働き方改革の必要性
  • 設計・施工・マネジメントの具体的な見直しポイント
  • リアルウッド建材の「現場支援」の取り組み事例

建築業界で「働き方改革」が求められる理由

現場の人材確保が難しくなる中で、「どう働くか」よりも「どう働かせるか」が問われる時代に突入しています。これまでのように熟練の職人に頼るスタイルは、もはや持続不可能。業界全体が「属人性」からの脱却を求められています。

高齢化・若手不足・多能工化の流れ

現在、建設業従事者の約35%が55歳以上を占めており、10年後には大量の引退が見込まれています。一方で、20代〜30代の若手が入職しても、長時間労働や休日取得の難しさから定着率が低いのが現状です。

こうした人材ギャップを補うため、「多能工」=一人で複数の作業をこなせる人材育成も進められていますが、これは技能・教育・安全すべての領域に高度なマネジメントが必要となり、ハードルが高いのも事実です。

現場の属人化と施工品質リスク

多くの現場では、熟練の職人の「経験と勘」に依存した施工が未だに主流となっており、個々のスキルや判断力に作業品質が左右されています。

この属人化が招く問題として、現場ごとの品質ばらつき、施工ミスによるやり直し、急な人員交代時の引き継ぎ不備などが挙げられます。特に工程管理が不十分な現場では、作業内容が可視化されておらず、後工程に影響が及ぶことも少なくありません。

現場力をチーム全体で底上げするためには、誰が入っても一定の品質が保たれる“標準化”と“共有知化”が不可欠です。

現場の働き方を変える「設計・施工・マネジメント」の見直し

働き方改革というと制度や福利厚生に目が向きがちですが、建築業では現場そのものの設計や進行体制を見直すことが最優先課題です。

プレカット・プレパネルの導入による技能依存の軽減

従来の木造建築では、部材の加工や現場での調整に高度な技能を要していました。しかし、工場であらかじめ加工された「プレカット材」や、構造・断熱・面材が一体化した「プレパネル」の導入により、現場での複雑な作業を削減することが可能になります。

これにより、経験が浅いスタッフでも正確な施工ができる体制が整い、人材育成にかかる期間や属人性が緩和されます。施工の再現性が向上するため、教育工数の削減、作業効率の向上、品質の平準化といったメリットも生まれています。

システム化・マニュアル化による施工標準の共有

現場作業を“見える化”し、誰もが理解できる形で「施工の標準」を定義することが求められています。

具体的には、工程ごとのマニュアル化、チェックリストの整備、施工動画の活用などにより、技能の属人性を排除しやすくなります。

また、進捗管理や資材搬入タイミングの最適化をシステム化することで、無駄な待機時間の削減や段取りの明確化にも寄与します。こうした標準化は、品質・工程・安全性のトリプル改善につながる要となります。

協力会社との関係性再構築と現場力の底上げ

下請け・協力会社の力は現場運営に欠かせません。

しかし発注関係が上下構造で硬直化すると、現場の改善提案やノウハウの共有が滞りやすくなります。そこで、発注者と協力会社が対等なパートナーシップを築くことが重要です。

たとえば、共同で現場改善ミーティングを行ったり、協力業者向けの研修会を開催することで、情報共有と相互理解が進みます。結果として現場全体の力量が底上げされ、作業効率や品質、現場士気の向上にもつながる好循環を生み出します。

リアルウッド建材が実践する現場支援の取り組み

働き方改革に取り組む企業や工務店を支援するために、リアルウッド建材では「施工省力化」と「品質平準化」に直結する製品開発・サポート体制を展開しています。

構造・断熱一体型「DUAL-MAXパネル」の提供

リアルウッド建材が提供する「DUAL-MAXパネル」は、構造材と断熱材、そして面材が一体化した高性能パネルです。

これまで分離していた施工工程を1ステップに集約することで、現場作業の省力化を可能にします。

また、あらかじめ断熱性能と構造性能が担保された状態で納品されるため、施工ミスや断熱欠損といったリスクも最小限に抑えられます。これにより、現場の作業者の技能差による品質バラつきが起きにくく、設計通りの高性能住宅を再現性高く実現できます。

導入工務店との協働による改善サイクル

リアルウッド建材は、製品を提供するだけでなく、実際に導入している工務店からのフィードバックを活用しながら製品改良・施工支援を繰り返しています。

現場で感じた課題や改善点を直接ヒアリングし、製品仕様や納品形態、施工手順に反映するPDCAサイクルを整備。さらに、定期的な現場訪問やWeb会議によって、現場目線のサポート体制も構築しています。

このように、現場とメーカーが一体となって育てていく体制が、持続可能な働き方改革の推進力になっています。

現場標準化データとカスタマイズ対応の両立

現場の「標準化」は効率向上に不可欠ですが、すべてを画一的にしてしまうと対応力が下がります。リアルウッド建材では、標準化された部材・手順をベースにしながらも、案件ごとのカスタマイズ対応も併存させ、柔軟な施工体制を可能にしています。

デジタルとリアルの融合が建築業の働き方改革を加速させる

建築業における働き方改革は、単なる現場の負荷軽減にとどまりません。「現場」と「設計」「管理」の境界をテクノロジーでつなぐことが、組織全体の生産性向上と人材定着の鍵を握ります。

リアルな技能の継承と、デジタルによる標準化・効率化をどう融合させるかが今後の課題です。

BIMや施工管理アプリによる“見える現場”の実現

BIM(Building Information Modeling)や、現場進捗をリアルタイムで共有できるクラウド施工管理アプリの導入は、現場の進行状況や施工品質を、遠隔地からも把握可能にする「見える化」の象徴です。

これにより、無駄な移動や報告業務が削減され、設計・施工の連携ミスも防げます。また、新人スタッフでもタブレットで手順を確認しながら作業できるようになるため、教育の効率化にも寄与します。

まとめ

建築業界における働き方改革は、単なる時間管理や休暇取得の改善ではなく、現場の構造そのものを再設計することに本質があります。

人材不足の時代にあっても、品質を保ちながら生産性を向上させるには、プレカット・パネル化・マニュアル整備・パートナー連携といった複数の手段を並行して進める必要があります。

この記事のまとめ

  • 建築業界では高齢化と若手不足が深刻化し、働き方改革が急務
  • 現場プロセスの属人化が施工品質と安全性を圧迫している
  • プレカット・パネル工法で施工負担と技能依存を軽減できる
  • マニュアル整備と協力業者との連携で施工の標準化を推進
  • リアルウッド建材はDUAL-MAXパネルなどで「現場改革」を支援

監修者: 谷口 伸太郎

1964年、滋賀県大津市南志賀に生まれる。近江神宮にほど近い自然豊かな環境で幼少期を過ごし、木と建築への興味を育んできた。建築業界での経験を重ねる中で、現場の属人性や職人不足による施工品質のばらつきという課題に危機感を覚える。高性能で安定した品質の住宅づくりをサポートしたいという想いから、2006年、リアルウッド建材を設立し代表取締役に就任。断熱・耐震・施工性を兼ね備えたDUAL-MAXパネル工法を開発し、高性能住宅をより多くの方に届けるために日々奮闘している。保有資格:二級建築士。

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